Park College #13

哲GAKU 第6回「中西メソッド×腸脳力」(後編)

Park Collegeでは、連続講座「中西哲生の哲GAKU」をオンラインで開催しています (毎月14日開催、全12回予定、無料)。

第6回目は「中西メソッド×腸脳力」をテーマに、腸にこそ“覚悟”や“直感”などの生きるための力と知恵「腸脳力」があるというしくみに着目、「腸脳力」の著者でありサイエンスライターの長沼敬憲をゲストに迎えて、2021年2月14日(日)に実施されました。

前編に続き後編も、さまざまな分野の知見をスポーツ技術に応用しコーチする中西哲生の視点から、ぜひ自身の学びや気づきに繋げ、楽しんでいただければと思います。

「素質があるとかないとかではない部分で、自分の足を引っ張っていることがあるので、そこをどうやったら改善できるか」(長沼)

2人のトーク中場面

長沼敬憲(以下、長沼):前回の話を整理すると、体調を整えたいならパンよりもご飯がいい。精製していない割合が高いほうがいいので、麺類はパンよりも良くて、ご飯よりも良くない、ということになります。ご飯なら白米だけでなく玄米雑穀がいい。少しずつ腸に優しい食事を増やしていくと、感情も安定するし、食事で安らぐという体験が増えていきます。

中西哲生(以下、中西):食べる時には気持ちよく、楽しんで、ゆっくり、味わって、といったことが大事なのですね。ところで、加工品などを控えて体にいいものを選んで口にしているけれど、どうも調子が悪い、という悩みを抱えている人もいるかもしれません。

長沼:体にいいものを摂っても改善されない人は、生活のリズムが乱れていたり、食事の時間がバラバラだったり、ということが考えられます。食べること以外の仕事などがどうしても優先されてしまっている、ということです。食事はなるべく同じ時間に、同じくらいの量を摂ったほうがいい。ルーティンを作るのが大事で、それはライフスタイルを作っていくということにつながります。そのほうがパフォーマンスは上がってくるということが分かってくれば、色々と工夫していけるでしょう。同じ忙しい日常のなかでも、変わってくると思うのです。あとは、自分を取り巻く環境としての「場」の重要性です。どういうシチュエーションで食べるのか、とか。

中西:楽しみながら食べられる方法を考える、といったことでしょうか?

長沼:そうですね。コロナ禍のいまは難しいかもしれないですけれど、旅行をしてみるとか。環境というのはお腹の環境も含めてなので、すぐに色々とできない人は、まずお腹の環境を整えてください。

中西:体の内側から変えていく、と。

長沼:食事は毎日摂るものなので、そこを整えていって腸が元気になると、結果的に脳の働きも神経系を介して良くなる。脳からではなく腸から脳への指令はかなり多い、そちらのほうが多いという研究もあります。腸が元気になれば、脳のパフォーマンスを上げてくれます。スポーツの素質があるとかないとかではない部分で、自分の足を引っ張っていることがあるので、そこをどうやったら改善できるか。誰でもできる食事から変えていく楽しさに目覚めてくれるといいかな、と思います。

中西:僕は『腸脳力』を読んで食事を考えるようになったら、脳が働くようになりました。TBSの『サンデーモーニング』は2時間の生放送で、いつ何を聞かれるのか分かりません。張本勲さんから予想もしていなかったことを聞かれることもあるので(苦笑)、脳が働いていなかったら大変なのです。

長沼:そうですね(笑)。僕らは体を持っていて、そこに命が宿っているから生きている。その条件として代謝をする(食べる、呼吸をする)。それから、細胞の段階でも細胞膜というのがあって、絶えずそこで外部とコミュニケーションをしている。いまこうして中西さんと話しているのもコミュニケーションだし、細胞レベルで言うと食べ物を摂り入れるのもコミュニケーションです。だから、コミュニケーションがうまくいかないと不快なことが起きる。日常の人間関係で心掛けていることを、実は体の中でもやっているのです。それから、生き物は複製して子孫を残しますが、人はそこに歴史を感じたり、時間を持ってきたりするようになった。そういう感覚は他の生きものにはなくて。

中西:それは脳があるからなのでしょうね、僕たちは考えますから。

長沼:動物の営みには、食文化はそれほどありません。食べるものは決まっているので。一方、人は多様なものを食べることができて、それゆえに過剰になり過ぎて甘いもの中毒みたいになってしまう人がいれば、文化を上手に取り入れて生活を豊かにする人もいる。そこをどういうふうに、自分でクリエイトするか。

中西:自分がどういうふうに生きるのか。腸で感じて生きるのか、脳で考えたもので生きていくのか、というところを考え直さないといけないですね。

長沼:原点は腸ですが、でも、脳も上手に使わないといけないです。

「骨盤をうまく使えているときが、しっぽで直感をキャッチしていることだと気づかされました」(中西)

トーク中の長沼敬憲

中西:長沼さんの著書『腸脳力』のなかに、「動物はしっぽで直感をキャッチする」という記述があります。これを読んだときに、ものすごく腑に落ちました。この感覚がサッカー選手に生まれてくると、よりパフォーマンスが良くなる、と。

長沼:生き物がどういう存在なのかという延長でとらえるといいのですが、生き物は食べて呼吸をする以外に動く。それでは、どう動くのか。実際は考えている暇もなく動いていますよね。脳が発達しているから脳でコントロールしている、判断しているような気持ちになっているのですが。

中西:スポーツには脳で判断している余裕がありません。頭で考えていたらもう、間に合いません。

長沼:日常生活でも本当は、感じて動くほうがいいので、その感覚を磨いていきましょう、と。その具体的な方法が、しっぽで直観をキャッチする、ということです。動物的に人間を見るとしっぽになる。そうすると、思いと行動がつながりやすくなる。その感覚を身に着けたほうが、自分の本質とか本音に近い生き方になる、スポーツならば、より高いパフォーマンスにつながるかもしれません。

中西:サッカーをやっているときに、脳で考えていると間に合わない、じゃあどこで考えているのとなったときに、サッカーだから足で考えているっていう感覚でいたのですが、それって何となく違うなと自分では思っていて。そのときにしっぽがあるあたりというか尾骨というか、骨盤をうまく使えているときは、アンテナがきれいに動いている感覚を得ることができていました。相手の気配を察知出来たりして、感覚が鋭敏になっている。動きそのものもいいなと感じることができて、それがまさに「動物はしっぽで直感をキャッチする」ということだったのだと気づかされました。

長沼:体の構造を調べていったときに、そうやってとらえたほうが合理的かな、という視点です。

中西:だから僕は、サッカー選手にも腸を大事にしてほしいし、食べるものを大事にしてほしい。その感覚を磨いていくために、脳ではなく腸の感覚を持つことができれば、サッカーをより進化させられると思ったのです。

長沼:スポーツはとくに感情とかメンタルが大事で──感情の揺れは、私たちの仕事でも当然影響します。そのブレが気になって、ブレない生き方をやろうとしても無理ですよね。ブレないでいよう、ブレないでいよう、と脳で考えても。

中西:その瞬間にもう、ブレていますからね。

長沼:だから、変わらないものを作っておく。腹を据える、とか。スポーツなら重心、腸が基軸ですよね、動作の起点になる。そういうふうに体ができています。

中西:本当に腑に落ちたんです。

長沼:まさか読んでいただいているとは。

「感じて動いている人のプレーが感動を呼ぶ」(中西)

トーク中の中西哲生

中西:では、実際に何を食べていけばいいのか。

中西:最後に、今日お話していただいたことをどうやって広めているのかということで、長沼さんが代表をお務めのセルフメンテナンス協会の活動を教えてください。

長沼:セルフメンテナンスをひとりで実践すると偏ってしまうし、長く続かないことが多いので、まずは場を作りたいなと考えました。去年のコロナが始まったころから会員が増えていって、情報を一緒に共有しながらファスティングをしたり、ヨガをやったり色々なプログラムを組んでいます。大事なのは頑張り過ぎないことです。

中西:それが大事ですね。

長沼:体が緊張することを腸は喜びません。過度な緊張でストイックにやると破綻するので、日常生活で頑張っている人が多いことからも、いかに頑張らせないか、緩ませることがすごく大事です。お腹も緩んで動く状態に、少しずつ、という感じで。共有感が大事かなと思っていて、仲間を増やしていけたらと思っていますので、興味のある方は検索をしていただけたら幸いです。

中西:僕はとにかく『腸脳力』を読んでほしいですね。あとはお腹としっぽで行動できるサッカー選手を、どんどん増やしていきたいです。頭で考えなきゃいけないこともたくさんありますけど、最終的に自分の体が動く瞬間は、頭に聞いていたら間に合わないことがほとんどなので。

長沼:そういう動きが感動するプレーだったりパフォーマンスだったりだと思うので、感じる力も持ってほしいですね。アスリートの方々は、感じて動いている見本みたいものでしょうから。

中西:感じて動いている人のプレーが感動を呼ぶ、ということですもんね。

長沼:そうして連鎖的に、自分もそういう生き方に近づくようなヒントというか、刺激をいただけるようなことがあるのかな、と思うのです。

中西:今日こうしてお話をうかがって、知りたいことがさらに増えました。機会がありましたら、またぜひこういう時間をいただければと思います。視聴してくださったみなさんは、食べること、腸のことに知識が増えたでしょうから、すぐできることからぜひ実践していただければ。

長沼:少しずつ、じわじわっとやりましょう。

中西:長沼さん、ありがとうございました。

長沼:ありがとうございました。

中西:視聴していただいたみなさんも、ありがとうございました。

テキスト:戸塚啓(スポーツライター)

Profile

中西哲生 Tetsuo Nakanishi

スポーツジャーナリスト/パーソナルコーチ。現役時代は名古屋グランパス、川崎フロンターレでプレイ。現在は日本サッカー協会参与、川崎フロンターレクラブ特命大使、出雲観光大使などを務める。TBS『サンデーモーニング』、テレビ朝日『Get Sports』のコメンテーター。TOKYO FM『TOKYO TEPPAN FRIDAY』ラジオパーソナリティ。サッカー選手のパーソナルコーチとしては、当時インテルに所属していた長友佑都を担当することから始まり、現在は永里優季、久保建英、中井卓大、斉藤光毅などを指導している。

長沼敬憲 Takanori Naganuma

1969年、山梨県生まれ。セルフメンテナンス食事法開発者。医療・健康・食・生命科学・ボディワーク・歴史・哲学といった幅広いジャンルの書籍を、横断的に企画・編集・執筆。自身の著書『腸脳力』は、腸活や腸脳相関が注目される以前(2011年)に独自の取材により執筆し出版、現在も増刷を続けるロングセラーとなっている。2020年4月、著書『ゆるむ! 最強のセルフメンテナンス〜腸からはじめる食事の教科書』を刊行。南雲吉則『50歳を超えても30代に見える生き方』、小林弘幸『人生を決めるのは脳が1割、腸が9割』、白澤卓二『ガンもボケも逃げ出す「人生のテーマ」の見つけ方』、安保徹「人が病気になるたった2つの原因」、藤田紘一郎『腸内細菌と共に生きる』、光岡知足『大切なことはすべて腸内細菌が教えてくれた』なども手がける。モットーは「ニュートラルに生きる」。

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