Park College #13

哲GAKU 第6回「中西メソッド×腸脳力」(前編)

Park Collegeでは、連続講座「中西哲生の哲GAKU」をオンラインで開催しています (毎月14日開催、全12回予定、無料)。

第6回目は、腸にこそ"覚悟"や"直感"などの生きるための力と知恵「腸脳力」があるというしくみに着目、「腸脳力」の著者でありサイエンスライターの長沼敬憲をゲストに迎えて、実施されました。腸が元気になると脳のパフォーマンスがあがる?! 腸で消化・吸収したものが自分自身の材料になり、食べたものが身体も心も作るという、腸の重要性を学べました。

サッカーやスポーツの技術を向上させたい方も、スポーツにはあまり縁がない方、指導する立場の方も、さまざまな分野の知見をスポーツ技術に応用しコーチする中西哲生の視点から、ぜひ自身の学びや気づきに繋げ、楽しんでいただければと思います。

「腸の消化吸収力が、自分自身の力、生命力、生きる力なんですよ」(長沼)

トーク中の中西哲生

中西哲生(以下、中西):みなさん、こんばんは。第6回『哲GAKU』へようこそ。今回ゲストにお越しいただいたのは、『N14中西メソッド』の構築だけでなく僕の生活スタイル──51歳ですごく元気に過ごせているのは、おそらくこの方のおかげだと思っています。サイエンスライターで日本セルフメンテナンス協会代表の長沼敬憲さんです。よろしくお願いします!

長沼敬憲(以下、長沼):よろしくお願いします。

中西:長沼さんが出版した『腸脳力』を読んで、僕は本当に人生が変わりました。長沼さん、「生物にとってはじめに腸ありき」ということですが、脳よりも腸が先ということなのでしょうか?

長沼:そうです。脳が発達するのはそのあとの段階です。生物の進化を辿ると、最初のイソギンチャクみたいな生き物は、腸だけだったんですね。食べるだけの生き物です。食べて出すだけみたいな生き物が原型であり、僕らの祖先。そこから大型化、複雑化していって、脊椎動物が出てくるわけです。具体的に腸のお話をしていくと、まずは「You are what you eat」がキーワードだと思います。

中西:あなたが食べているものがあなた自身、ということですが。

長沼:人間は生きものなので、食べることが生きることの原点にあります。生命が誕生したころからそうやって生き続けてきた。その延長線上に人はいるので、食べたものが自分の体を作るし、心も含めて大本(おおもと)になっている。

中西:身体だけでなく心も作っていると。

長沼:食べもののクオリティにもよりますけれど、それが自分自身の材料になります。さらに言うと、食べることは消化・吸収することで、その場所が腸です。

中西:どんな食べ物でも腸で吸収されないかぎり、体内には取り込むことができない。ここが重要ですよね。

長沼:そうです。腸の消化吸収力が、自分自身の力、生命力、生きる力なんですよ。学んだものをどれだけ消化吸収できるのかと同じ意味合いで、食べたものをちゃんと自分の体に入れるのが腸です。そして、消化吸収だけじゃなくておそらく感情とかの原型が腸から生まれたんじゃないか、というのが発生学とかの分野で言われていることですね。お腹が減ったら不快で、それが排泄できなくても不快だし、逆に満たされたら快で心地好い。ちゃんと出せたら、それも快です。

中西:確かにそうですね。

長沼:快、不快というのは、食べるとか食べられないとか、生物としては最初のところで、我々で言う感情の原型ができたんじゃないか、と言われています。

中西:快とか不快は感情の原型というのは、大いに納得させられます。食べられないとなったときに、「何で食べられないんだ」、というのが感情だし。

長沼:脳で思っているような感情とは違う、もっと現象的な、生物的な感情ですね。構造的にやっぱり、脳が先行しちゃう部分というのが、いまはどんどん進んでいますよね。誰もが先を読みたがる。でも、それは感覚的にずれている場合があるんですよね。

中西:腸の感覚のほうが正しいんですね。

長沼:本当に素直に生きている人は、腸の感覚を大事にしていると思いますよ。

中西:腸とか体が喜ぶこととか、体が望んでいることをまずする、ということにフォーカスしたほうがいいんですね。

長沼:発生は脳より腸が先なので、まず腸を整えて、そのあと脳も使えるようになったほうが、ポテンシャルは発揮しやすい。

「腸内環境がいいと、自然とポジティブになる」(中西)

トーク中の長沼敬憲

中西:脳からではなく腸から、に考えかたを変えたほうがいいわけですね。心との関連性については?

長沼:ちゃんと消化できるかどうか、ですよね。消化できないと便秘になり、メンタルも落ちてしまう。上がらない。不快です。そういうものが積もり積もって、代謝のレベルが落ちて、体の調子が悪くなる。そうすると、ポジティブな人もネガティブになりやすい。心がけだけでポジティブになろうとしても、なかなか難しいものでしょう。

中西:腸内環境がいいと、自然とポジティブになる。

長沼:だから、無理にポジティブにならなくても、なれる条件を身体の中に作っていくほうが合理的です。

中西:それですよね! それをしたいんです。

長沼:食べるということは消化吸収と排泄で、それは腸の反応なんですね。小腸と大腸を合わせて腸と言います。食べ物を消化しなければいけないので、小腸はすごく長くなりました。それは生命活動にすごく大事な場所だからでもあります。

中西:長いことで吸収するタイミングをたくさん作っている?

長沼:そうです。ひだのようになっていて、表面積がすごく大きい。で、その腸がどれだけ動いているかを「ぜん動」と言うのですが、それも食べるものの内容次第で、食べるものによっては動きにくくなる。そうするとメンタルにも影響する。便秘は「ぜん動」がうまくいかなくなることです。

中西:用意していただいた資料によると、「動物性食品に偏らない」とありますが、お肉やお魚ばかり食べると「ぜん動」がうまくいかなくなるのでしょうか?

長沼:お肉もお魚もいいところはいっぱいあるのですが、繊維質が腸の「ぜん動」を助ける成分というのかな、だから、穀類とかに含まれている昔はかすだと思われていた部分を、精製していない段階で体に取り込むと、大腸まで運ばれて排泄が促されます。

中西:そうすると、不快ではなく快になりますね。

長沼:生き物の原点としては、入れて出せないと、快になりません。それをどれだけやれているか。なおかつ、排泄する、いわゆる便を作る器官、そこには腸内細菌があります。自分の体なんだけど、自分以外の生き物が無数に共生しているわけですよね。だから、彼らが心地良く生きられるようにしないと。

「長沼さんの『腸脳力』を読んで海藻を食べるようになってから、体の調子がすごくいいんです」(中西)

2人のトーク中場面

中西:では、実際に何を食べていけばいいのか。

長沼:色々な考えかたがありますが、原点に返ることが大事だと思っていて、人は生き物であり動物です。動物は植物と微生物、つまりもともと存在していたものに助けてもらうのが、食事の大事なポイントです。植物というのは、野菜、果物、海藻。植物は自力で生きていける生き物、生物の分野では独立栄養と呼ばれていますけれど、我々動物は従属栄養、単独では生きられないから餌をとる、食べるという行為が必要です。何を食べるとなったときに自分に足りない者は植物が持っているので、植物に助けてもらう。肉がダメとか魚がダメとかいう話ではなくて、前提として動物はどうやって植物を上手に体に入れるのかがポイントと考えます。

中西:僕は『腸脳力』を読んでから、海藻をものすごくたくさん食べるようになりました。ワカメ、昆布、めかぶ、茎ワカメ、海苔などですが、そういうものを食べていると本当に調子が良くなって、すごく助けられています。野菜とか果物を取るのは、皮を剝いたりするのが手間なので、ひとり暮らしだとなかなか大変で。でも、海苔とか海藻を麺類に入れるだけで摂れます。

長沼:良い食生活の入口としていいと思いますよ。

中西:僕と同じ一人暮らしの方に、海藻類がお薦めですね。ミネラルが豊富ですし。

長沼:野菜、果物、海藻に加えて発酵食品も必要です。日本は大豆系の発酵食品が多いので、それを上手に取り入れてご飯、みそ汁との黄金の組み合わせを作る。そのクオリティをちょっとずつ上げていく、というのがいいでしょう。

中西:炭水化物の摂りかたについては?

長沼:炭水化物のなかには、腸内細菌のえさになる食物繊維とかオリゴ糖が含まれていす。量としては、上手に摂ったほうがいいですね。制限が必要な場合もありますけど、あまり過剰にえさをあげると、腸内細菌との共生がうまくいかなくなる可能性があります。

中西:ご飯を食べたほうが排泄はしやすい、と聞いたことがありますが。

長沼:それは相性でしょう。食品は加工が進むほど、自然から離れていく。そうすると、消化に対しては負担がかかります。

中西:そのままのもの、のほうがいいのですね。

長沼:なるべくならば。もちろん限度はありますけど、食べられるところはなるべく食べたほうが、生物として見た場合はいい。精製したり加工したりというのは、歴史が浅いので、過去の時代に食べていなかったものを取り込まなければいけないので、どうしても腸は混乱します。

中西:加工しているかどうかで考えると、パスタとかパンよりはお米がいい、ということになりますね。

長沼:ご飯も白米だと繊維が足りなくなるので、そこをどうフォローするかです。雑穀を入れるとか。あるいは、他の食品で補うとか。

トーク中の中西哲生

中西:腸とストレスというのは、どういうことですか?

長沼:先ほどお話したように、もともと生き物は快、不快をお腹で感じていました。そこがストレスの起源に近いと思うのです。いまの我々も、ストレスはお腹で感じている。嫌なことがあったり、プレッシャーが強かったりすると、だんだんお腹の調子が悪くなりませんか? あれは脳が認知する前の段階で、お腹が反応しているからです。

中西:なるほど。

長沼:そのあとで脳も、「あ、いまストレスが溜まっているんだな」とか、「いま緊張しているんだな」というのは認知しますが。日常的なストレスのケアが大事になりますが、放置しておくと動きが鈍くなるのは腸なんです。ひどい下痢になる人も、お通じが滞る人もいます。

中西:そうならないためには、どうすればいいのでしょう?

長沼:ストレスケアをするにあたっては、まず腸が動くような食事に切り替えていくのが大事です。できればそれを、なるべくリラックスできる環境で食べる。ひとりで寂しく食べる、とかではなく。

中西:コロナ禍でなかなか外出ができないので、自宅でひとりで自炊をすることが多いのですが、そのときでも「美味しい」と思って食べたほうがいいわけでしょうか?

長沼:そうです、演出が大事です。どういう意識で食べるか。ちょっと余裕を持って食べるとか。

中西:急いで食べない。

長沼:仕事が忙しいからといってガツガツと食べちゃうと、腸には負担がかかります。

中西:そうなると、いいパフォーマンスにならない。

長沼:イライラしたり、とかいう状態になりますよね。ストレスケアのメソッドは色々ありますが、そういうものもやれる範囲で取り入れて、腸が動く状態をどれぐらいキープできるか、がポイントです。

(以下、後編へ続く)

テキスト:戸塚啓(スポーツライター)

Profile

中西哲生 Tetsuo Nakanishi

スポーツジャーナリスト/パーソナルコーチ。現役時代は名古屋グランパス、川崎フロンターレでプレイ。現在は日本サッカー協会参与、川崎フロンターレクラブ特命大使、出雲観光大使などを務める。TBS『サンデーモーニング』、テレビ朝日『Get Sports』のコメンテーター。TOKYO FM『TOKYO TEPPAN FRIDAY』ラジオパーソナリティ。サッカー選手のパーソナルコーチとしては、当時インテルに所属していた長友佑都を担当することから始まり、現在は永里優季、久保建英、中井卓大、斉藤光毅などを指導している。

長沼敬憲 Takanori Naganuma

1969年、山梨県生まれ。セルフメンテナンス食事法開発者。医療・健康・食・生命科学・ボディワーク・歴史・哲学といった幅広いジャンルの書籍を、横断的に企画・編集・執筆。自身の著書『腸脳力』は、腸活や腸脳相関が注目される以前(2011年)に独自の取材により執筆し出版、現在も増刷を続けるロングセラーとなっている。2020年4月、著書『ゆるむ! 最強のセルフメンテナンス〜腸からはじめる食事の教科書』を刊行。南雲吉則『50歳を超えても30代に見える生き方』、小林弘幸『人生を決めるのは脳が1割、腸が9割』、白澤卓二『ガンもボケも逃げ出す「人生のテーマ」の見つけ方』、安保徹「人が病気になるたった2つの原因」、藤田紘一郎『腸内細菌と共に生きる』、光岡知足『大切なことはすべて腸内細菌が教えてくれた』なども手がける。モットーは「ニュートラルに生きる」。

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